チベットの古い物語です。何と何と「龍樹大師」という呼び名で龍樹が登場するお話なのです。
チベットの若者トンドゥプにはセルチェーというお兄さんがいます。お兄さんはまほうをならいに魔法使いの7人兄弟に弟子入りしますがさっぱり魔法を教えてくれません。トンドゥプがお兄さんのところに来てしばらく一緒に過ごしていたとき、トンドゥプの方が夜中に魔法の修行をしているところを物陰から覗いて、魔法をおぼえてしまいます。
お兄さんを口説いて帰ることにしたトンドゥプですが、7人の魔法使いたちが気づいて追いかけてきます。
トンドゥプは、追っ手を逃れて逃げまくります。最後に洞窟に飛び込んで中にいた龍樹大師に助けを求めるのです。
龍樹大師(左手のかっこいい人物)は、トンドゥプを数珠の玉に変身させて、それを握って7人の魔法使いを待ちます。
魔法使い7人は、龍樹大師にムカデになってはり付きましたので、トンドゥプはたまらず鶏になってムカデをつつきます。すると、ムカデは7人の死体になってしまいました。
トンドゥプは犯した大罪に震えますが、龍樹大師は罪滅ぼしの方法を教えます。「幸せを呼ぶしかばね」を袋に入れて持ち帰るというものでした。「おやすいご用です」というトンドゥプを制して、龍樹大師は「袋に入れて持ち帰る道中一言もことばを発してはならない」と教えます。ことばを発したら、しかばねはすぐ墓場に戻ってしまうと教えます。そして、デチュー洞窟にやって来たいい子(サンボ)だから、デチュー・サンボという名前をもらい、意気揚々としかばねを捉えに出かけて行くのでありました。
おもしろそうでしょ。
しかばねは捉えられては、その度に面白い物語を語るので、デチェー・サンボは我慢しきれずことばを発しその度ごとに墓場に戻ってしまう、というお話しなのです。
さあ、幸運を呼ぶしかばねを龍樹大師の元に届けられるのでしょうか。。ドキドキしますね。
インドの古いお話を元に作られたのだといわれます、信仰厚いチベットの人々は、こうして、「ジャータカ」「アヴァダーナ」のような、仏教の物語のようにして受けとっていったのかなあと想像しているところです。
コメント
『カターサリットサーガラ』の『屍鬼二十五話』も入ってるかもしれませんね。
pocketさま あたり!
ルーツは、『屍鬼二十五話』らしいと解説に書いてありました。
チベットの人が作ったお話のようだとも書いてあったのですが、自然にそうなっていったのかもしれませんね。それにしても、チベットの人にとっては、龍樹は、このように偉大な存在なんだなあということがわかって、けっこううれしいというか、なんというか。。
他にもいろんなことを想像してしまいます。ブッダが何か善いことを求めて出家した、ということも、輪廻を信じていることも、遠く繋がっているんだな、と思わせられます。