心にしみる原始仏典


『スッタ・ニパータ』(『クッダカ・ニカーヤ』)(PTS Text,PP.18-20.)

第1章 蛇の章 6 破滅経

このようにわたしは聞きました:
あるとき、尊師は、サーヴァッティのジェータ(祇陀)太子の林にある給孤独長者の園に滞在していました。
そのとき、ある神が、夜半過ぎ、容色もうるわしく、ジェータ太子の林全体を照らして、尊師のところに近づきました。
近づいて、尊師に礼拝して一方の隅に立ちました。一方の隅に立ったその神は、尊師に詩で話しかけました。

91 「破滅する人のことを、わたしたちは、ゴータマにお尋ねします。
尊師に尋ねるためにやってきました。破滅する人にとって入り口になるのは、何ですか」

92 「知りやすいのは、繁栄であるし、知りやすいのは、破滅です。
法を愛する人は、繁栄するし、法を嫌うものは破滅します」

93 「これは、わかります。第一の破滅です。
尊師よ、第二のものを語ってください。破滅する人にとって入り口になるのは何ですか」

94 「善くない人々を愛して、善い人々を愛すことがなく、善くない人の法を喜ぶ、
これが、破滅する人の入り口です」

95 「これは、よくわかります。これは第二の破滅です。
第三のものを、尊師よ、語ってください。破滅する人にとって入り口になるのは何ですか」」

96 「眠りを好み、集会を好み、無気力で、怠惰で、怒りっぽいのが特徴の人、
これが、破滅する人の入り口です」

97 「これは、よくわかります。これは第三の破滅です。
第四のものを、尊師よ、語ってください。破滅する人にとって入り口になるのは何ですか」

98 「老いて老年になった母や父を、それが出来るにもかかわらず、養わない。
これが破滅する人の入り口です」

99 「これは、善く分かります。これは、第四の破滅です。
第五のものを、尊師よ、語ってください。破滅する人にとって入り口になるのは何ですか」

100 「バラモンにであれ、沙門にであれ、その他の乞食する者にであれ、
嘘の語りでだますなら、これが破滅する人の入り口です」

101 「これは、よくわかります。これは、第五の破滅です。
尊師よ、第六のものを語ってください。破滅する人にとって入り口になるのは何ですか」

102 「巨万の富があり、黄金をもつ人が、食事中に一人でおいしいものを食べるなら、
これは、破滅する人の入り口です」

103 「これは、よくわかります。これが、第六の破滅です。
尊師よ、第七のものを語ってください。破滅する人にとって入り口になるのは何ですか」

104 「生まれを誇り(ジャーティッタダ)、財を誇り(ダナッタダ)、氏姓を誇る(ゴーッタッタダ)人が、
自分の親族を軽蔑するなら、これは、破滅する人の入り口です」

105 「これは、よくわかります。これが、第七の破滅です。
尊師よ、第八のものを語ってください。破滅する人にとって入り口になるのは何ですか」

106 「女性に溺れ(イッティドゥッタ)、酒に溺れ(スラードゥッタ)、賭博にふける(アッカドゥッタ)人が、
得たもの、得たものを失っていくなら、これは、破滅する人の入り口です」

107 「これは、よくわかります。これは、第八の破滅です。
尊師よ、第九のものを語ってください。破滅する人にとって入り口になるのは何ですか」

108 「自分の妻に満足せずに、遊女たちのところに現れ、他の妻たちのところに現れるなら、
これは、破滅する人の入り口です」

109 「これは、よくわかります。これは、第九の破滅です。
尊師よ、第十のものを語ってください。破滅する人にとって入り口になるのは何ですか」

110 「青春をすぎた男が、ティンバル果のような乳房の女を慕って、彼女への嫉妬が休むことがないなら、
これは破滅する人の入り口です」

111 「これは、よくわかります。これは、第十の破滅です。
尊師よ、第十一のものを語ってください。破滅する人にとって入り口になるのは何ですか」

112 「酒肉を貪って散財する女でも男でも、このようなものに主権をおくとすれば、
これは破滅する人の入り口です」

113 「これは、よくわかります。これは、第十一の破滅です。
尊師よ、第十二のものを語ってください。破滅する人にとって入り口になるのは何ですか」

114 「クシャトリア(貴族階級)の家に生まれて、財力が乏しいのに欲望が大きな者が、
この世において王権を求めるなら、これは、破滅する人の入り口である」

115 「これらを、破滅の世界において、賢者は観察して、聖なる者は、見ることを具えています。
かれは、吉祥なる世界に親しみ近づくのです」




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