心にしみる原始仏典


『アングッタラ・ニカーヤ』VIII.24(PTS Text,Vol.4,pp.218-220)


1.あるとき、尊師はアーラヴィのアッガーラヴァ塔廟に滞在していた。
 さて、アーラヴィの住人ハッタカは、500人の優婆塞(在家信者)をともなって、尊師のところに近づいた。近づいて、尊師に敬礼して一隅に座った。一隅に座ったアーラヴィの住人ハッタカに、尊師は次のように言った:

2.じつに、大なるのは、あなたの衆会(しゅうえ)である、ハッタカよ。いったい、どのようにして、ハッタカよ、あなたはこのような大きな衆会をまとめているのか。

 尊師よ、尊師によって説かれた四つの「まとめる基盤(摂事)」がありますが、これによって、わたしはこの大きな衆会をまとめているのです。
 尊師よ、わたしは、「この人は、布施によって、まとめねばならない」と知ると、かれを布施によってまとめるのです。
 「この人は、愛情深い言葉によってまとめねばならない」と知ると、かれを愛情深い言葉によってまとめるのです。
 「この人は、利益になる行いによってまとめねばならない」と知ると、かれを利益になる行いによってまとめるのです。
 「この人は、自他平等にすることによってまとめねばならない」と知ると、かれを自他平等にすることによってまとめるのです。
 じっさいのところ、あるものといえば、わたしの家の財産なのです。もし(わたしが)貧しいならば、この通りに聞くことはできない(わたしがブッダの教えどおりに聞くことはできない)と、人々は思うところでしょう。
 
3.よろしい、よろしい、ハッタカよ。わたしがあなたに(あたえた)※これらは、大いなる衆会をまとめるためのものである。ハッタカよ。
 じつに、過去世において、大いなる衆会をまとめた者たちは、すべて、これら四つの「まとめる基盤」によって、大いなる衆会をまとめてきたのである。
 ハッタカよ、未来世においても大いなる衆会をまとめるだろう者たちは、すべて、これら四つの「まとめる基盤」によって、大いなる衆会をまとめるだろう。
 ハッタカよ、現在も、大いなる衆会をまとめている者たちは、すべて、これら四つの「まとめる基盤」によって、大いなる衆会をまとめているのである。

4.さて、アーラヴィの住人ハッタカは、尊師から、法の話を教えられ、訓戒され、励まされて、喜んだ。(かれは)座より立ち上がって、尊師に敬礼し、右回りにまわって、出発した。
 さて、尊師は、アーラヴィの住人ハッタカが去ってまもなく比丘たちに呼びかけた。

5.比丘たちよ、八つの希有で未曾有の法を具足したアーラヴィの住人ハッタカのことを憶えておきなさい。何が、八つなのか?

6.比丘たちよ、信ある者がアーラヴィの住人ハッタカである。
比丘たちよ、戒を守る者がアーラヴィの住人ハッタカである。
比丘たちよ、慚ある(自制心ある)者がアーラヴィの住人ハッタカである。
比丘たちよ、愧ある者がアーラヴィの住人ハッタカである。
比丘たちよ、よく学ぶ者がアーラヴィの住人ハッタカである。
比丘たちよ、捨ある(平静である)者がアーラヴィの住人ハッタカである。
比丘たちよ、智慧ある者がアーラヴィの住人ハッタカである。
比丘たちよ、小欲なる者がアーラヴィの住人ハッタカである。

 比丘たちよ、これら八つの希有で未曾有の法を具足した者をアーラヴィの住人ハッタカであると憶えておきなさい。

※「わたしがあなたに(あたえた)」はtyAhaMの読みを採用。他には、tyAyaMの読みもあり、こちらを採用すると「あなたの(述べる)これらは、…」となるだろうか。


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